座席未指定券1
座席未指定券とは今年3月のダイヤ改正で登場した制度です。今のところ座席未指定券を発売している特急列車はJR東日本の常磐線特急「ひたち」・「ときわ」、「スワローあかぎ」、「成田エクスプレス」の4列車です。
一言で言うならば、日付と区間が指定され、座席が指定されていない状態の指定席特急券です。座席未指定券から指定席特急券への変更は乗車変更のカウント外かつ無手数料でできますが、逆はできません。
全車指定席列車の空席利用という点では東北新幹線の盛岡以北や秋田新幹線での特定特急券の制度に近いですが、特定特急券は自由席相当の特急料金に対し、座席未指定券は指定席相当の料金です。払戻手数料は指定席に準じた330円です。
これが座席未指定券の現物です。券名は「特急券(座席未指定)」となっています。常磐線ですので、列車名は「ひたち号・ときわ号」とダミーの列車名が入っています。
座席未指定券は全車指定席の特急列車の空席に座席を指定せず乗車する際に使用します。車掌のハンディ端末には発売済みの座席情報が送信され、指定席発売済みの座席が分かるようになっています。なので、未発売の座席に座っている客(≒座席未指定券所持客)だけを対象に車内改札を行います。
ただし、座席未指定券所持客は車掌の車内改札を受けたからと言っていま座っている座席が確保されるわけではなく、券面の注意書きにもあるとおり、後からその座席の指定を持った客が現れたら明け渡して別の席に移動しなければなりません。きっぷの発売額は同じですが、指定席特急券を持った客の方が立場が上です。車掌が端末上で入力して座席を確保する仕組みはどこかの私鉄が実現していた気がするんですが、あいにくそこまでの機能は実装されていません。
常磐線の特急停車駅にはこのような「スマートエクスプレス宣言!」なる掲示がいたるところに貼られています。実際スマートかどうかは利用客が決めることで、私はこの座席未指定券の制度を見た時、「これは一体誰にとって何のメリットがあるのだろうか?」と考えてしまいました。利用客について考えられたのは以下の2点です
- 予定が未定の場合に座席未指定券だけ先に購入し、予定が決まってから指定席に変更できる。
- 1両に数人しか乗っていないようなガラガラで指定を取るまでもない時に空いている好きな座席に座れる。
でも、それはそれまであった自由席特急券で事は足りますし、実に些細なことです。逆に発売側(JR東日本)のメリットを推測してみました。
- 車内改札の簡略化?による人件費の削減
- 自由席廃止による増収
- 車内発売料金(260円)徴収による増収
「成田エクスプレス」についてはもともと全車指定席でなので、あまり該当しないかもしれませんが、私が思いつく限りではこんなところです。コスト削減と増収を同時に狙ったのではないかと。実際に車内改札が楽になったのかは中の人ではないので何とも言えませんが…。
一点気になっているのは座席未指定券を持った客が座っているところに、後から指定席を持った客が乗ってきてもすんなり場所を移動してくれるか?という点です。相手がDQNだったり、寝ていたり、酔っ払っていたり、権利ばかり主張する強情な老人だったりするとトラブルになりかねないです。仮に自分が指定席を持っていてその席に座る権利があるとしても、別の客が先に座っていて、それを移動させるのはあまりいい気分ではありません。
個人的には車掌の端末で座席未指定券の客にも座席が割り当てられるようにすべきと思いますが、発売側は全車指定席を浸透させ、事前に指定を取ることを原則としたいでしょうから、当面現状維持だろうなと思います。
座席未指定券については今後何回に分けて取り上げていきます。
車内改札の簡略化による人件費の削減、という点で大きな影響を受けたのは、水戸運輸区です。
E657の導入前は、ここの運輸区の乗務員が特急(このころの専務車掌は2~5名乗っていました)や普通列車に乗務しているのをよく見かけました。
しかし特急の両数の短縮化が進むに連れ、水戸運輸区の行路が次第に常磐線友部以南から減ってゆき、今年のダイヤ改正で20人以上が土浦運輸区に移動となりました。
その一方で、水戸線・水郡線では余剰人員による特別改札やワンマン解除などといった動きが活発化しています。
投稿情報: GuPVOG2013 | 2015年6 月24日 (水曜日) 20時18分
私鉄特急は座席指定が当たり前で、飛び込みでも座席指定と同じ料金を払うわけです。
JREも同じことをやりたいんでしょうが、普通列車グリーン車やら全車自由席特急やら、これまでの営業施策と正反対のことをやろうとしているだけに混乱しますよね。
投稿情報: よこりん | 2015年6 月24日 (水曜日) 20時50分
以前神田近くで勤務したいた時、残業がかさんだ時は上野から特急でないと帰宅できなかったので自由席で帰ってました。すぐに買って乗れる自由席の方が「スマート」だと感じましたけど。
これで乗客が減らなければ、東京圏内の特急にも同じシステムを導入していくのでしょうか。
投稿情報: kei | 2015年6 月25日 (木曜日) 17時31分
未指定券で乗ったとき、まず車内改札を受け、その席の客が来たので別の席を移動したら、そこでも車内改札を受け、さらに・・・と席替えする度に改札を受け続けることになりますね。
極論、全員が未指定なら自由席として成立する訳で、指定と自由が混在する状態は逆にスマートからかけ離れるような気がします。
投稿情報: ららら | 2015年6 月25日 (木曜日) 23時13分
ひたち・ときわを使ってみて、いくつか引っかかることがありました。
①遅延時に融通の利かないチケットレスとMV(目の前に遅れている特急が発車待ちの状態でいるのに指定を取れない)
②品川と上野始発が混在してるために未指定→指定で区間が変わる場合、窓口対応となってしまう。
どちらもシステム上致し方ないのかもしれませんが、②はあずさ回数券や東海道新幹線自由席のように品川~上野⇔○○と東京3駅を一括りにするなど工夫が必要だと思います。
人減らしのために導入したシステムのはずなのに、結果的に東京や上野などの残った窓口は混雑が酷くなったように見えます。
投稿情報: しなちく | 2015年6 月26日 (金曜日) 23時53分
>各位
たくさんのコメントありがとうございます。
>GuPVOG2013さん
E653系の時は最大14両編成だったのが、E657系になってからは10両編成固定になりましたしね。
余剰となった車掌は今のところは水戸支社管内での異動になっていますが、そのうち特別改札の取りやめや再ワンマン化があると他支社への広域異動もありえますね。
>よこりんさん
私も全車指定の私鉄特急の真似をしたいんだろうなと感じました。
「ひたち」「ときわ」はともかく、「あかぎ」はつい1年半前まで普通車は全車自由席だったのに、増収のためとはいえこんなに急に変えてしまって大丈夫かいなとは思います。
>keiさん
自由席は券売機にお金入れて行先ボタン押すだけで発券できますから、今よりずっと簡便で自由席には自由席の良さがあったと思います。
私個人的には「スワローあかぎ」を実験台にして「ひたち」「ときわ」に広げ、さらに「湘南ライナー」や通勤時間帯の房総特急あたりにも導入するのではないかと思います。
>らららさん
全車指定席を謳いつつも、同じ車内に指定席と実質的な自由席が混在しているから分かりづらいんでしょうね。極端な話、座席未指定券は立席特急券のように指定席が満席の時のみ発売する方が分かりやすいかもしれません。
>しなちくさん
①は仕方ないかなぁ…とは思いますが、車内で車掌が座席未指定券の客に対して座席を確保できる仕組みを導入すれば、概ね解決できると思います。
②について例えば、品川~泉間と上野~泉間で特急料金が変わります。おっしゃる通り東海道新幹線の東京・品川のような特例ができれば解決しますが、今の制度のままだと品川~上野の一括りは厳しいですね。
ただ、いずれにしろ発売側の工夫ないと解決できないので、もう少し利用客のこと考えて何とかしてほしいですね。
投稿情報: 今出川 | 2015年6 月27日 (土曜日) 01時14分