市川大門
山梨県市川三郷町のHPに「市川大門駅切符販売員募集」という求人が掲載されたのは昨年11月のことでした。身延線・市川大門駅は特急「ふじかわ」が停車する特急停車駅ですが、国鉄末期の昭和60年に無人化されて以来、年に一度の花火大会の日を除き駅員の配置はありませんでした。そこに町が人件費を負担してきっぷの発売を行うということになりました。
市川三郷町は平成17年に三町が合併してできた新しい町で、町の中心は旧・市川大門町になります。旧・市川大門町には身延線の駅が以下の3駅ありました。
【平成7年9月末】
市川本町:急行停車駅(有人駅)
市川大門: (無人駅)
鰍沢口 :急行停車駅(有人駅)
町の行政の中心は市川本町駅近くに集中しており、急行「富士川」も停車する名実ともに町の中心駅でした。しかし、平成7年10月に急行「富士川」を特急「ふじかわ」に格上げする際に、特急停車駅を隣の市川大門駅に変更し、それと同時に市川本町駅が無人化されました。
市川本町が有人駅だったころのきっぷがありました。JR初期のものなので硬券ですが、無人化直前はPOS端末が入っていたんじゃないかと思われます。
【平成23年3月まで】
市川本町: (無人駅)
市川大門:特急停車駅(無人駅)
鰍沢口 :特急停車駅(有人駅)
駅舎新築を機に新たに特急停車駅となった市川大門駅ですが、相変わらず無人駅のままでした。町内の有人駅は鰍沢口駅のみでした。市川本町駅の駅舎は取り壊され、公衆便所のような簡易駅舎になってしまいました。
【平成24年3月まで】
市川本町: (無人駅)
市川大門:特急停車駅(無人駅)
鰍沢口 :特急停車駅(無人駅)
昨今のJR東海の業務委託廃止の一環で、町内唯一の有人駅であった鰍沢口駅まで無人化されてしまい、町から有人駅が消えました。きっぷや定期券を買うには町外の東花輪駅か身延駅へ出向く必要がありました。
【現在】
市川本町: (無人駅)
市川大門:特急停車駅(有人駅)
鰍沢口 :特急停車駅(無人駅)
さきほど書いたように、市川大門駅が新年度の4月1日より簡易委託駅として29年ぶりに有人となりました。町がお金を出して人を雇ってまで無人駅を有人化したのは、やはり町民から不便だという強い不満が上がったんでしょう。
(市川大門駅)
その市川大門駅を訪ねてきました。鉄筋コンクリート製の中華風の新しい駅舎が目を引きます。はっきり言って周囲から浮いています。この中には公民館や町民専用の温泉施設も同居しています。
(窓口の様子)
窓口には「JR線乗車券委託販売所」と大きく表示されています。町では臨時職員を3名採用し、交代で勤務にあたるそうです。私が訪ねたのは日曜の昼間で、新学期の定期券を買う人が多く見られました。また、甲府の方へ行くばあさんが「ここできっぷが買えるようになってよかった」と笑顔で窓口の人と話していたのが印象的でした。
町のHPの求人募集には「採用者はJRのマルス端末操作などの研修を行う」とあったので、マルス端末が設置されるであろうということは推測できました。そして、その通りMR32型のマルス端末が設置されていました。
意外だったのは発売箇所のところに○ムの印が押されたことでした。MR32型のマルス端末が設置されているとはいえ、簡易委託駅である市川大門駅では発売できる券種に制限があります。そういった駅で希望するきっぷが買えなかった場合は「買替」をすることになります。旅客都合と発売側の都合を区別するためにこういった表示をします。ただし、マルス券にわざわざこの印を押されたのは初めてでした。
市川大門駅では入場券も発売しています。チケッターはないようです。クレジットカードは使えません。営業時間は以下の通りです。
月~土曜 8:45~18:10
日曜 9:10~17:10
せっかく町がお金を出してまで有人化したんですから、これ以外にもきっぷを購入して少しばかり売り上げに貢献してきました。いちおう宣伝でした。
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