道半ば
東日本大震災から4ヶ月経ちました。被災をされた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
先日コレクションを眺めていたら、2年前に利用したこんなきっぷを見つけました。南気仙沼駅発の快速「南三陸2号」の指定券です。
(南気仙沼駅に進入する「南三陸2号」)
私にとっては「南三陸」の車両がキハ110系に変更されて以来初の乗車でした。この時の指定席は満席で、途中からは仙台へ向かう客で通路やデッキに人が立っていました。A席は海側の席で、朝焼けに輝く穏やかな海が印象的でもありました。
私はこの前の日に大船渡線で気仙沼入りし、気仙沼線に乗り換えて南気仙沼駅で降り、南気仙沼駅近くの宿に泊まってフカヒレ料理のコースを食べました。これはこの時出発前に撮影していた南気仙沼駅です。wikipediaの片隅に被災後の同駅の写真がありましたが、見る影もありません。あの穏やかだった海から悪魔のような津波が押し寄せ、街や駅を破壊したのが未だに信じられない感です。
JR東日本の社長は気仙沼線を含む被災路線について「責任を持って復旧させる」と言明していましたが、7月9日の毎日新聞にちょっと気になる記事がありました。
宮城県気仙沼市の菅原茂市長は「莫大な金をかけ鉄道を再建する意味はあるのか」と問題提起する。同市内を走る気仙沼線は、市内11駅のうち5駅の駅舎が完全に流失。市は復旧に向けて動き始めてはいるが、「鉄道が必要なのか、もっと議論があってもいい」と強調する。
市内で最も乗車人数が多い本吉駅でも、1日平均360人にすぎない。菅原市長は鉄道が持つ交通ネットワークの重要性は認めながらも、「道路やバスなども含め、市民にとって最も大切な交通機関は何なのか、じっくり考えたい」と話す。
本吉駅があるのは気仙沼市に吸収された旧本吉町であり、旧気仙沼市域では気仙沼線に対する依存度がさらに低いと言うことになります。気仙沼市のことだけ考えれば一理あると思います。大船渡線の一ノ関~気仙沼間は既に復旧していますし、今のスキームでは気仙沼線復旧に対して沿線自治体も応分の負担をしなければならないですから、費用対効果の悪い事業にお金を使いたくないというのは偽らざる本音かと推測します。
ただ、その視点だと市外から気仙沼線を利用して気仙沼へ往来する人に対する視点が完全に欠落しています。仮に気仙沼線を全線復旧させないならば、気仙沼線は「宮城県三陸沿岸を結ぶネットワーク」から「石巻線から分岐するただの盲腸線」と化します。そうなるとJR東日本としては巨費を投じて復旧させる意義は薄まります。
よって、気仙沼線の復旧要否は気仙沼市の一存で決められる話ではなく、他の沿線自治体(石巻市・登米市・南三陸町)を巻き込んだ議論が不可欠だと思います。その場において「不要」という結論が出れば廃線もやむなしでしょう。
私は国がJR東日本や沿線自治体の負担を少なくするスキームを作って、道路や港湾と同じように復旧を急ぐべきだと思います。その代わり復旧させた路線が無駄にならないよう沿線自治体や住民に対して鉄道利用を促進するよう知恵を出させ、それを実行に移す努力義務を課します。ダイヤを調整してバスと鉄道を接続させたり、乗継割引を設定したりして役割分担させるのもいいですし、どうせ最初から線路を敷き直すわけですから、住民が利用しやすい場所に駅を新設したり移設したりするのもいいと思います。
そんなわけで南気仙沼駅が元のように復旧するかは全く読めません。仮に復旧するとしてもまだ道半ばで、それが何年先になるかとんと見当も付きません。復旧したあかつきにはまた気仙沼線に乗ってフカヒレを食べに行きたいと思っています。
>市外から気仙沼線を利用して気仙沼へ往来する人に対する視点が完全に欠落しています
三陸道の全線開通を目指すという話は聞こえてきますが、鉄道の復旧については遅々と進みませんね。おそらく自動車専用道路が開通してしまえば、高速バス輸送がご指摘の気仙沼への旅客輸送にとって変わってしまうことが目に見えています。そのほうが費用対効果が高ければなおのことでしょうね。
投稿情報: 根津千駄木 | 2011年7 月12日 (火曜日) 02時33分
こがね引退前くらいに初めて気仙沼線に乗りました。
南気仙沼の港に行ってうまいもんでも食おうかなぁ、
と思ったのですが路線バスとの接続が悪く、計画段階で断念しました。
おっしゃる通り、市外からの利用者にはとても便利とは思えない路線です。
普通列車しかないので乗車時間も長いですし、仙台からの特急なんかがあったらいいのになぁ、なんて思いますが、難しいでしょうね。
投稿情報: がらくた | 2011年7 月12日 (火曜日) 22時27分
大変ご無沙汰しております。
昨年のこがねふかひれ号引退の際、気仙沼に行きました。
同列車関連のグッズの配布が終了していたこともあり、駅に降り立ったヲタ連中の大半は早々に引き上げていましたが、グッズの代わりにと
駅前の観光案内の方から頂いた「お刺身用生わかめ」のことが今でも忘れられません。
現地が落ち着いた頃にでも、お礼と復興支援をかねて気仙沼を訪問したいとおもっています。
追伸
気仙沼市長の発言はわたしも残念でなりません。不祥事を起こした赤福の社長だか会長が「参宮線はいらない」と発言したのと似ているなと感じました。
投稿情報: Boo | 2011年7 月13日 (水曜日) 23時50分
>根津千駄木さん
志津川から運転されている気仙沼線代替バスの時間がかかりすぎて高校生の通学に支障が出ているというような記事を読んだので、交通弱者を中心に気仙沼線を必要としている人はいると思います。
三陸道の気仙沼までの到達は今回の震災で遅れるでしょうから、それまで気仙沼線を放置するようにも思えません。
>がらくたさん
私は散歩がてら南気仙沼駅から魚市場まで歩いてまぐろ丼を食べに行きました。南気仙沼駅が気仙沼市の玄関口のようですが、あまり便利ではないですね。
快速「南三陸」は車両が変わってからサービス的に悪くないので、増発してもいいんじゃないかなぁと思っていました。
>Booさん
ご無沙汰しとります。私はその列車の指定券をどうしても取ることができず断念したクチです。前日に定期最後の上り「こがねふかひれ」で乗り納めを済ませたのが震災前最後の気仙沼線でした。
この時、気仙沼駅前の土産物屋でいろいろと買い込んだんですが、店のおばちゃんに「品評会で金賞を取った極上わかめ」を強く勧められ、ついつい買って帰りました。それを九州人にあげたところ絶賛されました。
気仙沼市長の発言は私もちょっと残念ですが、市政の最高責任者の立場から復興の優先順位を勘案してのことだと思います。それに赤福の会長みたいに積極的に廃止にしたいという意図はないと思います。
投稿情報: 今出川 | 2011年7 月14日 (木曜日) 00時24分