増毛
(増毛駅駅名板)
今年7月下旬にJR北海道は留萌線・留萌~増毛間を来年度に廃止する方針を固めたという報道が流れました。
もともと大赤字なうえに、冬季は土砂崩れにより長期間運休になるのが常態化しており、その対策費に莫大な費用がかかることも廃止を検討する一因となっています。また、増毛駅に乗り入れる列車は1日わずか6往復です。増毛~留萌間には1日9往復のバスが運行されていて、沿線住民にとっては鉄道が主要な交通機関でないのは否定しがたいところです。
JR北海道は8月に沿線の留萌市長および増毛町長に対して廃止の意向を伝えたそうです。今後は地元が意見集約をし、どう対処するかが焦点になってきました。留萌市議会が市民にアンケートを取ったところ、廃止容認派が8割近くに及びました。増毛町の動向にもよりますが、廃止の方向に進んでいきそうな感です。
最新のJR北海道の決算資料に輸送密度が少ない路線の収支状況が載っていました。以下は輸送密度が低い順にワースト6の路線の指標を抜粋しました。
営業収益 営業損益 営業係数
留萌線 留萌~増毛 5 -207 4121
札沼線 北海道医療大学~新十津川 16 -291 1909
石勝線 新夕張~夕張 14 -158 1247
根室線 富良野~新得 60 -796 1430
留萌線 深川~留萌 46 -559 1316
宗谷線 名寄~稚内 487 -2161 543
営業収益・営業損益の単位は百万円です。ここで言う営業収益は運賃収入と同義です。留萌線・留萌~増毛間の平成26年度一年間の運賃収入はたった500万円です。1日に平均すると13700円ほどです。(正確を期すならば百万円以下を四捨五入しているので運賃収入は450~549万円の範囲)
営業損益は営業収益から人件費・燃料費・車両維持費・税金などコストを差し引いたもので、プラスであれば黒字、マイナスであれば赤字です。ここに挙げた路線は全てマイナスの赤字路線です。
営業係数とは国鉄末期の赤字線廃止の指標にも用いられた数字で、100円を稼ぐのにいくらコストを要するかの比率です。必ずしも経営状態を正確に示すものではありませんが、数字が大きいほど経営効率が悪い不要路線とみなされます。留萌線・留萌~増毛間の営業係数は4121で、100円を稼ぐのに4121円要しているという意味です。普通の商店だったら今日にでも店を畳んだ方がいいぐらいです。ひいき目に見てもよく今まで存廃論議が出なかったなと思います。
6位の宗谷線・名寄~稚内間は営業係数こそ543でまだマシな印象は受けますが、赤字額は21億円を超えていて、ワースト5の赤字額の合計を超えます。また、JR北海道の鉄道事業での赤字が約415億円(!)なので、これらワースト6が占める赤字は全体のほぼ1割です。額としては大きくありません。
なので、輸送密度が高く営業係数は良くても、赤字額はもっと大きい路線が潜んでいます。おそらくJR北海道は札幌近郊以外はすべて赤字なんじゃないかと思います。
(増毛駅で発車を待つ列車)
上の写真の通り増毛駅は棒線状の単式ホームがある無人駅です。かつては有人で貨物扱いもあり、広い構内と側線跡が往時を物語ります。増毛の街はかつてニシン漁で栄え、町内には歴史ある建物が建ち並びます。高倉健主演の映画「駅 STATION」の舞台にもなり、高倉健が増毛駅の改札を通って列車に乗るシーンもあります。駅周辺は何もない寂しい終着駅をイメージしていたんですが、思いのほか「街」だなと感じました。
管理駅の留萌駅で「毛が増える」の増毛にあやかった増毛駅の入場券を2種類発売しています。縦型のものはD型硬券の記念様式です。絵柄入りのD型の硬券入場券は数あれど、縦型はあまり見ないです。裏面には増毛という地名の由来や町の紹介が入っています。発売箇所は増毛駅となっています。
B型の通常様式の硬券入場券も発売していました。こちらの発売箇所は管理駅の留萌駅となっています。無人駅はきっぷを発売しないので、発売箇所には管理駅になるのが普通です。
私が増毛を訪ねた時は列車で降り立ったわけではなく、滝川からレンタカーを借りて行きました。私にとってはJR北海道で唯一未乗となっているのがこの留萌~増毛間で、そのうち乗りに行かないとな…とは思っていました。そろそろまじめに計画を立てないと行けないまま終わってしまいそうです。
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