上幌向
JR北海道は9月末で以下の3駅の窓口営業を終了し、無人化することを発表しました。
- 函館線・上幌向
- 石勝線(夕張支線)・清水沢
- トマムトラベルセンター(トマム駅直結の「アルファリゾート・トマム」内)
昨今の報道の通りJR北海道では今後数年にわたり安全対策に巨額の投資を必要とするため、資産の売却や採算が見込めない事業の整理を進めてきました。キハ285系の営業運転投入中止、客室乗務員の削減、東京駅にあった「JR北海道プラザ」の閉鎖、DMVの研究開発の終了もその流れです。
7月の北海道新聞の報道でJR北海道が9月末で上幌向を含む6駅の無人化と、その後も十数駅の廃止・無人化も合わせて検討しているというニュースが流れました。合理化の波がついに鉄道事業の本丸に及んできたなと感じました。
対象駅の地元は判で押したように「一方的だ」と反発し、中には富良野市のように将来的な廃線を警戒してJR北海道との協議すら拒絶する自治体も出てくる有様です。
私はいつもこういう自治体の反応を見て思うんですが、反発したって何も出やしません。政治家に手をまわしてひっくり返すのは国鉄なら可能だったでしょうが、JR北海道は採算ベースで判断する民間企業ですからその手法は通用しません(100%通用しないとは言いませんが)。現状を理解し何か代案を出さない限り、いったん決まった方針は覆りません。もう国鉄じゃないのです。
ただ、JR北海道および北海道は国鉄分割民営化の負の部分を一身に背負わされた感はあり、気の毒ではあります。全国を見渡すと、地元自治体による駅の簡易委託や維持管理はもちろんのこと、固定資産税軽減のため駅舎の譲り受け、車両購入のための無利子貸付も行い、JRの負担を減らす工夫をしています。
私は施設や車両は自治体で引き受け、JR北海道は運行に専念する第三セクターのような上下分離も検討してはどうかと思います。冬季の厳しい気候やこれからの人口減を踏まえると、今後JR北海道の経営状態が好転するとは思えません。北海道新幹線が札幌まで開通したとしても、豪雪地帯にある新幹線施設の維持管理が過重な負担になるでしょうし、そもそも事業の採算性からして疑問です。
島根県は東西に広い県内を横断する山陰線の高速化を望んでいました。消極的だったJR西日本に対し県費を投入して高速化を実現しようとしましたが、自治体からJRへの寄付を禁止するという法律の壁があったためできませんでした。当時の島根県の澄田知事は国に働きかけ、法改正でこの条項を撤廃させ、隣の鳥取県とともに山陰線高速化を実現し、利便性が向上しました。
知事が国鉄の局長経験者で運輸政策に精通していたこと、島根県が政界に影響力のある与党の大物議員を複数輩出していたという幸運はありますが、知事が国を動かし法律を変えてまで地元に必要な施策を実現した意義は大きいと思います。要は知事が腹をくくって本気を出せれば、不可能と思われることでも変えることができるのです。
今の北海道知事にその胆力や政治的力量があるとはとても思えませんが、北海道にとって今後も鉄道が必要であるならば、道が主体となってJR北海道が継続的に経営できるようなスキームを考えていくべきだと思います。
(上幌向駅全景)
…前置きが長くなりましたが、上幌向に戻ります。 上幌向駅は岩見沢市にあり、岩見沢駅から一つ札幌寄りの駅です。特急列車は通過します。函館線と車が多く爆速する国道12号が並走する区間で、駅から手前の国道を跨ぐようにして「上幌向スカイロード」という屋根付きの歩道橋があります。写真に写っている建築物の大半はその歩道橋で、駅施設は矢印部分のわずかな駅舎スペースと右下に降りている階段だけです。
上幌向駅の窓口の様子です。みどりの窓口の傍らに食券型の券売機がありました。簡易自動改札とKitacaエリア内のため簡易読取機もあります。写真に写っていない右側には数人が座れる小さな待合室がありました。
(マルス入場券)
(総販入場券)
上幌向駅で翌日乗る予定の特急券を購入しました。また、合わせてマルスと総販の入場券も購入しています。昨年2月から総販での乗車券や自由席特急券の発券を行わなくなったらしいので、総販券を見かける機会はめっきり減りました。
空知支庁管内には上幌向駅と同時の9月末に無人化予定とされた駅が他に3駅ありましたが、結果的に3駅の無人化は来年3月末まで延期され、上幌向駅だけスケジュール通りに実行されました。JR北海道から無人化の打診があった際に岩見沢市長は「遺憾の意」を示し無人化に際しての安全対策は求めたものの、特に反対することなく受け入れたようです。
上幌向駅の島式ホームは狭い上に、特急列車や貨物列車が高速で通過します。特にホームが滑りやすくなる冬場は危なっかしい印象を受けました。また、駅のバリアフリー設備は整っておらず、誰かしら人はいた方がいいように見えました。こういう駅こそ自治体による簡易委託が適していると思えるんですが。
北海道の場合は「レールが必要か」と「駅や列車が必要か」が必ずしも一致しないのが問題を難しくしていますよね。
後者だけみれば「役目を終えた」と言えるのですが、前者については、稚内や網走、根室といった他国との接点にレールがなくてよいのかという話になります。
JR北海道はレール管理会社になって、事業意欲のある事業者が駅や車両を保有して運営するのはどうでしょうのね。
投稿情報: よこりん | 2015年10 月13日 (火曜日) 08時48分
何年か前にイタリアにフェラーリデザインの高速列車が誕生した時に、車両の保有および運行はイタロという民間会社で、線路は日本のJRに相当するトレニタリアが保有する上下分離方式だというのを何かの記事で読みました。
JRが上下のどちらを担うのかは意見はあるでしょうが、イタリアのように「下」を担う方式もありかと思います。
投稿情報: 今出川 | 2015年10 月13日 (火曜日) 23時18分