戦後
今日で終戦からちょうど70年を迎えました。私の祖父は70年前の今日、仏領インドシナ(現在のベトナム・カンボジアあたり)で陸軍中尉として終戦を迎えました。終戦時は司令部付の将校だったので、さほど労することなく復員できたと聞いています。地元名古屋に帰ってから結婚し3人の子供をもうけ、会社員として30年勤め上げ、退職後は趣味に生き、平成2年に70歳で亡くなっています。
いまわれわれがさほど不自由なく生活できているのは、焼け野原の何もないところからの復興に尽力したその世代の先人たちのお陰であり、そういった方々への感謝は日々忘れてはならないと思います。
堅苦しい話は変わってきっぷの話です。日本には「戦傷病者特別援護法」という法律があります。軍人・軍属が公務で負った傷病に対し、国家としてその後の生活を援護することを定めた法律です。おそらくどこの国にもこのような法律はあると思います。
該当者には「戦傷病者手帳」が交付されます。その援護の内容が法律で7つ規定されていて、その中の1つにJR線の無賃取扱いというものがあります。「戦傷病者後払制度」と呼ばれ、戦傷病者がJR線を利用する場合、国が後払いでその運賃を立て替えるという制度です。年間で規定された枚数のJR券の引換証(乗車券用と急行券用が別々)が交付されます。
利用条件はだいたい以下のような感じです。
- 乗車区間のキロ数の制限はなし。
- 急行列車(新幹線・特急列車を含む)を利用する場合は101Km以上の乗車券と併用する場合のみ可。
- 急行料金のうち国が負担するのは自由席部分に限られ、特急列車の指定席や「のぞみ」・「はやぶさ」など加算料金が発生する新幹線利用時は自由席との差額が自己負担になる。
- 乗継割引は適用可。
- 乗車変更の取扱いはしない。
これがその引換証を利用したきっぷです。右下の「戦後」という大きな印字が目立ちます。戦傷病者後払制度の略だと思われます。東京~名古屋間は100Kmを超えていますので、特急料金の利用条件を満たしています。また、発売額は無割引となっていますが、この金額を利用者が支払ったわけではなく、この額が後で国がJRに支払います。
こちらの乗車券は「戦後身」となっています。 こちらは戦傷病者が障害者手帳も持っている場合で、戦傷病者後払制度と身体障害者割引の両方が適用されたものになります。乗車券の金額は身体障害者割引が適用されて正規運賃(1850円)の半額となっています。国は920円をJRに支払います。
このきっぷの頃(平成元年~2年)は戦時中に軍人・軍属だった世代はまだ60~70代だったので、ソコソコ見ることはありました。駅の窓口で前に並んでいた爺さんが買っていたのを2~3回見たことがあります。しかし、もう戦後70年も経ったので、その世代は若くても80代半ばになっています。なので、最近ではとんと見かけなくなりました。
私の祖父は右足に戦闘で負傷した際の銃創はありましたが、日常生活に支障をきたすものではなく、戦傷病者手帳は持っていませんでした。なので、祖父が使ったものではありません。戦傷病者後払制度関連のきっぷはもう少しバリエーションがあるようですが、私の手持ちではこんなところです。
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