SL銀河号
◆種別:快速
◆区間:花巻~釜石
今年4月から復興支援と観光振興を目的として、釜石線・花巻~釜石間で快速「SL銀河」が運転されています。
機関車は盛岡市の岩手県営運動公園内に保存されていたC58-239を復活させました。C58-239は昭和15年に製造され、戦後は長く宮古機関区に配属され山田線を中心に活躍しました。昭和47年に廃車になってからは先述の公園に保存されていました。保存SLは放置されてボロボロに朽ち果てた末に解体されてしまうものも多くあるなか、この車両はOBの方を中心にして定期的に手入れしていたため保存状態が良好で、修復・復活の白羽の矢が立ったという経緯がありました。
客車には札沼線一部電化で余剰となったJR北海道のキハ141系を譲り受け、内外装を改造して使用しています。JR会社間の車両の移籍は珍しいです。キハ141系はもともと客車だった51系に動力を取り取り付けて気動車に改造された車両です。「SL銀河」用の客車に改造するに当たって、動力は撤去せずに気動車のままにしており、改造前後で種車の面影が随所に残っています。
(改造前:札沼線・桑園駅)
(改造後:東北線・花巻駅)
なので、「SL銀河」はSL+気動車という珍しい組み合わせの列車です。釜石線は急勾配があるため、SL単独での登りは厳しく、補機が連結されていました。かつて釜石線で運転されていた急行「SL銀河ドリーム」も後ろからディーゼル機関車が押していた記憶があります。改造に当たってキハ141系の動力を撤去しなかったのは、急勾配区間での補機代わりに気動車でSLを押すことを想定したものです。同時に機関車の入換作業を行う手間も省けています。実にうまいこと考えたものです。
「SL銀河」は花巻~釜石間を2日で1往復します。普通列車でも2時間程度で走る区間を4時間半かけて走りますので、無理からぬところです。列車の運行目的に観光支援という側面がありますから、簡単に日帰りされてしまっては困るんでしょう。
花巻 新花巻 遠野 釜石
往路 10:37 → 10:50 → 12:13/13:30 → 15:04
復路 15:20 ← 15:07 ← 13:54/12:41 ← 10:55
往復とも遠野駅で1時間10分程度の停車時間があります。この間を利用してSLの給水や整備を行っています。
「SL銀河」の指定席料金はJR東日本管内では初めて820円となりました。JR北海道やJR九州では以前より800円(4月から820円)となっていますが、JR東日本も追随した感じです。SLの維持費には相当の費用がかかりますから、私個人的にはSLの指定席料金は1000円程度でも構わないと思っています。
私が乗車したのは運転開始から2週間しか経っていないGW前半戦でしたから、花巻駅発車時点で7割がた埋まり、新花巻駅で東北新幹線からの乗り換え客が乗ってきて座席がほぼ全て埋まりました。意外に感じたのは途中の遠野駅で乗客の半分近くが入れ替わり、盛岡方面に戻る人も結構多かったことです。
内装は宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」と「東北の文化・自然・風景を通してイマジネーションの旅」をコンセプトとしているそうで、平たく言うとレトロ調の内装になっています。花巻方の最後尾4号車にはプラネタリウムが設置されていました。私は整理券を貰いそびれて見ることはできませんでしたが…。とにかく北海道にいた頃の近郊型のキハ141系を知っている身としては、よくここまで頑張って観光列車に改造したなぁという驚きが大きかったです。
外装は「銀河鉄道の夜」をイメージしたという青色です。夜が明けていく様子をイメージしているため、前から後ろ(釜石方→花巻方)につれて青の色調が明るくなっている凝りようです。写真ではうまく撮れたものがなかったので、興味があれば以下の動画で確認してみてください。
ちょっと脱線しますが、これはSLなしの気動車のみで試運転を行っている様子です。青色の明るい4号車を先頭に盛岡駅を発車しています。
運行開始直後の4月は指定が取りにくかったようですが、最近は幾分落ち着いてきているようです。遠方からの観光客の呼び込みは引き続き行っていくんでしょうが、沿線の客に飽きられないようにリピーターになってもらうことも必要かと思います。その点では、12月に予定している「SL銀河ナイトクルーズ」というのはなかなかいい企画だと思います。また、客車は気動車なので自走できます。SLが整備等で運行できない期間は気動車単独の運転でもいいかと思います(その際は指定席料金は520円にして欲しいですけど)。
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