飯田線秘境駅号
◆種別:急行
◆区間:豊橋~天竜峡
(飯田線・天竜峡)
ここのところ鉄道ブームらしいです。私は昨今の鉄道ブームはメディアが意図的に作り出したと思っていて、背筋がムズムズするような違和感があります。しかし、趣味として一般に認知されて敷居が下がることは決して悪くないのかなと思います。
「秘境駅」という定義は明確に決まったものはありませんが、「列車の本数・駅周辺人口・乗降客数が非常に少なくて、寂れた雰囲気のある駅」と言えば概ね語弊はないでしょう。その言葉を世間一般に知らしめたのは牛山隆信という人です。この人は普段はサラリーマンとして会社勤めをしながら、合間を見て「秘境駅」を訪ねて記録にまとめ、本まで出版したんだそうです。
その牛山氏がランク付けした秘境駅が飯田線に多くあります。そんなところに目を付けて飯田線にある秘境駅を手っ取り早く効率的に訪ねるパックツアー向けの団体列車が今年のGWから豊橋~天竜峡間で運転されています。それが好評だったそうで、今夏の運転からは一般向けにも指定券を発売するようになり、列車名を急行「飯田線秘境駅」号として全車指定席で運転されています。
JR東海のHPには「これまでは、ツアー参加者のみご利用になれましたが、今回、一部の座席はツアー申込以外のお客様もご利用することができます。」とわざわざ記載してあり、団体優先で団体の余席が一般向けに回るという実態が読み取れます。最近の臨時列車では予告もなく発売前から7~8割が団体枠で抜かれていて、一般向けではほとんど取れず釈然としないこともままありますが、この列車のように予めその旨が告知されていれば納得がいきます。
さて、肝心の指定券ですが発券に難儀しました。時刻表の通りの列車名で「飯田線秘境駅」と選択しても、運転日でエラーとなり発券できませんでした。設備や列車名を変えていろいろ試した結果、列車名を「飯田線急行秘境駅」と指定しないとダメということがわかりました。ここまでで10分かかりました。時刻表どおりの列車名で発券できないのはおかしいですし、他にも似たような列車名候補が7つぐらいあって、操作する人にとってはかなり紛らわしいと感じました。
結局、上り列車は取れたものの下り列車は満席になっていました(後日下り列車も確保できましたが…)。この列車を利用する複数社のパックツアーを見てみると例外なく下り列車は利用していますが、復路の上り列車は利用しないものがいくつかありました。中にはバスで木曽方面に抜けるものもありました。よって、指定は下りの方が取りにくいです。まぁ取れなくてもあるタイミングで団体枠の戻しがあるでしょうから、気長に待てば何とかなると思います。
『秘境駅を訪ねる=降りて散策する』ということが前提となるため、停車駅では10~30分の停車時間がありました。特に下り列車は10駅で散策する時間があり、全区間の所要時間はすごいことになりました。
豊橋 本長篠 中部天竜 平岡 天竜峡
秘境駅号 9:51 → 10:53 → 11:55 → 13:52 → 15:03
伊那路1号 10:08 → 10:45 → 11:22 → 11:57 → 12:40
普通519M 10:43 → 11:58 → 12:50 → 13:38 → 14:41
「飯田線秘境駅」号は豊橋駅を17分後に出発した特急「伊那路1号」に本長篠駅で抜かれ、天竜峡駅には2時間23分も先着されます。しかも、豊橋駅を52分後に出発した普通列車にさえも平岡駅で抜かれて、同じく天竜峡駅には22分先着されています。速度を追求する列車でないのは十分承知ですが、急行料金を払っているのに普通列車に抜かれるのは腑に落ちない感はありました。
車両はJR東海静岡車両所の373系で、シール貼りながら専用のヘッドマークも用意されていました。図柄に使われている電車はなぜか119系でしたが…。「伊那路」と同じ373系を使う手前、本当は特急料金を徴収したいところだけど、あまりに速度が遅いので急行料金で妥協したのかもしれません。ともあれ、飯田線の急行列車は臨時運転されていた急行時代の「伊那路」以来です。私は373系よりも窓が開く117系か119系の方が山あいを走る飯田線をより楽しめた感はありますが、長時間乗ることを考慮してより快適な373系にしたのかもしれません。
車内は3連休初日ということもあり、ぎっしり満席でした。見た感じ全乗客の8割以上はパックツアーの客でした。ツアーの客層は明らかに鉄ヲタは少なくて、中年以上の「普通の旅好きの夫婦」といった感の人が多かったです。これは意外でした。
列車が「秘境駅」に停車するたびに乗客は一斉にホームに降りて、駅や駅名板の写真を撮ったり付近を散策したりして人でごった返していました。上の写真は田本駅に到着した列車を上から撮影したものです(クリックすると拡大します)。乗客がホーム伝いの階段をこちらへ上がろうとしています。結構な人数がいることがわかるかと思います。ちなみに田本駅は私の中学2年の時の担任の出身地で、ここから飯田の高校まで電車通学していたそうです。長いこと会っていないけど元気なのかなぁ…とふと思い出したりしました。
「秘境駅」は本来人家も降り立つ人も少ない静寂のイメージですが、この時ばかりは静寂を打ち破るようなカオス状態になりました。「これじゃ秘境駅やないや~ん」と関西弁でつぶやいていた客がいましたが、私もそう感じました。しかし、これまで通ったことはあっても降りたことはない駅ばかりだったので、これはこれで面白かったと思いました。今度はもっと人が少ない時に訪ねてみたいものです。
真ん中の編成写真は飯田線・東栄駅で撮影したものです。
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