にちりんワンマン化?
(787系にちりん:日向市駅)
ここ数日の報道で大分~宮崎空港間を結ぶ特急「にちりん」をワンマン化する話が出ています。現在、「にちりん」は4両(787系)・5両(783系)・6両(787系)の編成があります。そのうち、ワンマン化を想定しているのは4両の「にちりん」だそうです。
マスコミ報道によって突如明るみになった感はありますが、JR九州ユニオンという労組では787系の車外スピーカー設置がワンマン化の準備工事であると昨年9月時点で問題提起しており、会社としては秘密裏にかつ周到に準備を進めてきた感はあります。鉄ヲタ的には労組がポロリする情報は確度が高くて貴重な内部情報です。
JR九州では特急列車のワンマン化は初めての事例ではなく、「九州横断特急」でワンマン運転が行われていた時期がありました。ただし、2両編成での運転時に限定され、3両以上で運転される際は車掌が乗務していました。それに車内改札などの旅客サービスは客室乗務員が行っていたので、大きなサービス劣化は感じませんでした。今回の「にちりん」のワンマン化も「九州横断特急」などと同様に車掌の仕事を客室乗務員が担うのかな?と思っていました。
ところが、客室乗務員は乗務せず、本当に運転士一人だけでのワンマン化を行うようです。そもそも、2年前に「ソニック」の車内販売終了した際に大分の客室乗務員の拠点は廃止してしまっていました。
ここでざっといくつか疑問が湧いてきます。
- 車内改札はやらないのか?
特急列車ですから当然特急券が必要です。自由席であれば下車時に駅で徴収することは可能ですが、指定席やグリーン席はどう確認するんでしょうか?車内改札しないのであれば、自由席の客が空いてるグリーン席に勝手に座ることだってありえます。
- 運転士だけでホームの乗降確認ができるのか?
確か津久見駅のホームは大きくカーブをしていて運転士席からだと見通しが悪いです。バックミラーぐらいは設置するんでしょうが、一抹の不安はあります。
- 車内でのトラブル発生時に対処できるのか?
はっきり言ってできないと思います。どうするつもりなんでしょうね?それに空調の微調整はしてもらえず、暑さ寒さは我慢するしかありません。
- 災害時の避難誘導はどうするのか?
この沿線特有ではありますが、南海トラフ地震や津波の被害も想定されているので、災害発生時に運転士だけで適切に乗客を誘導できるのか不安を訴える声が聞かれます。
ワンマン化の背景に浮かぶのはコスト削減を急ぐあまりの利用客軽視・安全軽視です。
平成5年8月の豪雨災害の際に日豊線・竜ヶ水駅に停車し立ち往生していた列車で、土石流の危険性を察知した乗務員の判断で乗客を安全な場所に誘導して避難させ、約300人の乗客の命を守りました。この時の乗務員の好判断は賞賛されテレビ番組でも紹介されました。もし、ワンマン化されていて運転士一人だとしたらこの時のように乗客の命を守れたかと思うとかなり疑わしいと思います。
昨年のGWに「にちりん」を利用した際の特急券です。短い区間の指定席でしたが、大分車掌センターの改札印が入っています。車内改札を行わないとなるとこうして指定券にチェックが入ることはなくなります。
JR九州は10月に悲願の上場を果たしました。上場企業になってしまった以上、安定的に利益を上げて株主に還元する必要がありますから、利益の極大化とともにコスト削減は常に付いて回ります。
そういった事情は分かるんですが、今回の「にちりん」のワンマン化や香椎線・筑豊線沿線をはじめとする駅の無人化など、近年これまで積み上げてきた利用客の信頼を全部ひっくり返すような施策が多すぎる印象があります。一生に一度のクルーズ列車に乗りに来るよそ者より、日常的かつ継続的に利用してくれる地元客をもう少し大事にしたほうがいいと思うんですが。上場の成果がこれではあまりに残念で情けないです。
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